腎臓のイメージ

進行を遅らせる鍵は今すぐケア 犬の腎臓病まるわかり完全ガイド

慢性腎臓病はシニア期に増える代表的な病気で、進むほど食欲低下や多飲多尿、体重減少、貧血などの不調が重なります。国際腎臓学会の指針では、クレアチニンとSDMAという腎機能マーカーを組み合わせたステージ分類に加え、尿タンパクの有無で重症度を細かく見極めることが推奨されています。早期から療法食と生活環境の調整を始めるほど、進行のスピードを緩めやすくなります。本ガイドでは最新知見をわかりやすく整理し、今日から取り入れられる実践ポイントをまとめました。

悪化を防ぐために押さえたい5つの柱

1 早期発見と定期モニタリングで先手を取る

腎臓はダメージが進んでも症状が目立ちにくく、機能が大きく落ちてから不調が表に出ることが多い臓器です。年2回の血液検査と尿検査を習慣にし、BUN、クレアチニン、リン、SDMA、尿比重、尿タンパクを継続して確認しましょう。SDMAは筋肉量の影響を受けにくく、クレアチニンより早い段階の腎機能低下を拾えると報告されています。微量でも尿タンパクが続く場合は、療法食や内服の検討時期と考えると判断が速くなります。

2 低リン設計と高品質たんぱくの療法食を軸にする

腎臓の負担源になりやすいリンを抑え、必須アミノ酸をしっかり満たす設計が基本です。療法食は総合栄養食の基準を満たしつつ、腎臓病期に合わせてミネラルと脂肪酸比が最適化されています。ドライだけで食が細い時は、ウェットや流動タイプを合わせると摂取量を保ちやすくなります。切り替えは7日以上かけて段階的に行い、便の状態や食欲に合わせて微調整してください。

食べ続けられる工夫を重ねる

ぬるま湯でふやかして香りを立てる、温める時間を短くして脂の酸化を防ぐ、小分け冷凍で風味を守るなど、毎日の小さな工夫が完食率を押し上げます。調味目的の人用フードや塩分が多いトッピングは避け、獣医師が許可した範囲で行いましょう。

3 自然に飲める環境づくりで水分を確保する

水分は老廃物の排出を助け、腎臓の負担軽減に直結します。皿の数を増やして動線上に置く、材質や形の異なるボウルを試す、循環式の給水ファウンテンを活用するなど、犬が自発的に飲みやすい工夫を広げてください。ウェットフードの比率を上げると総摂取水分が増えやすく、常温の軟水や無塩スープを少量混ぜる方法も有効です。必要量は体調や季節で変わるため、具体的な目安は主治医の指示に従い、飲水量と尿量をメモして共有すると調整がスムーズです。

口当たりと衛生を整える

水は毎日こまめに交換し、ボウルはぬめりが残らないように洗浄します。陶器やステンレスはニオイ移りが少なく、プラスチックで口の周りが赤くなる犬には素材変更が役立ちます。

4 血圧と尿タンパクをダブルで管理する

高血圧は腎臓の血管に負担をかけ、進行を加速させます。家庭用の動物対応血圧計で週1回同じ時間帯に測定し、数値を記録しましょう。収縮期が160ミリ水銀柱を超える状態が続くと、腎臓や眼など全身への影響が強くなるため、治療の検討が必要になります。尿タンパクは尿タンパクとクレアチニンの比で評価し、0.2未満を目標に管理します。治療はACE阻害薬やARBなどを用いますが、薬の種類や量は体格や腎機能で変わるため、必ず主治医の指示に従ってください。猫ではテルミサルタンの経口液が承認されていますが、犬での使用は地域や適応が異なるため事前確認が安心です。

ホームモニタリングのコツ

測定誤差を減らすため、カフのサイズを前脚の太さに合わせ、落ち着いた環境で複数回測り平均を取ります。尿は朝いちばんの中間尿を清潔な容器に採取すると、検査の精度が上がります。

5 抗酸化と抗炎症のサポートで細胞を守る

EPAやDHAなどのn3系脂肪酸、ビタミンE、αリポ酸、コエンザイムQ10といった栄養素は、炎症や酸化ストレスを抑える働きが期待されます。サプリメントはリンやカロリーの上乗せにもつながるため、療法食との相性を確認しながら用量を調整しましょう。貧血やリン高値、カリウム低値など、血液検査で補正が必要な項目が見つかったら、栄養介入と並行して治療を進めると全身状態が安定しやすくなります。

毎日の観察が最良の早期発見

食べる速さ、飲む量、尿の色や回数、元気度や体重の微妙な変化は、進行のサインになります。スマホで食事と体重を記録し、月1回の写真でボディラインを見返すと、言葉にしにくい違和感を共有しやすくなります。

参考文献

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